美濃谷は、長崎県の壱岐島にある観音堂。壱岐国三十三番巡礼の最後の札所で、春の彼岸には先祖の菩提を弔うために、島内にある三十三カ所の札所を巡礼する「美濃谷さん参り」が始まる。
正式には「サンヤ袋」と呼ばれる晒の袋に弁当やお供え物を入れて肩から掛け、札所に貼るお札を入れた「お札挟み」の袋を胸に吊るし、女竹の青竹の杖に紅い椿の花を一輪挿して巡礼するのだが、最近では水仙の花も見られる。
観音堂の傍らにある小さな井戸は「涙川」と呼ばれ、故人を偲んで井戸を覗くと、水面にその面影が浮かんでくると伝えられている。
御堂へ続く坂道の両側には、お参りの線香やろうそく、またお供え用のへそ菓子を売る露店が並ぶ。ちょうど鞠麩のような模様が入った小さな丸い菓子で、供養塔や御堂のあちこちにザルが用意してあり、お参りに来た人びとはその中にお賽銭や米と一緒にへそ菓子を入れて水を掛ける。他の札所でも同じようにへそ菓子と米、お賽銭を供える。
長崎県壱岐市芦辺町箱崎大左右触